研究概要 |
ソバは、栽培生育期間が短く、やせ地・乾燥地などの不良環境下でも育ち、病害虫・雑草の害を受けにくい。しかしながら、他殖性・無限伸育性で脱粒・倒伏しやすいために、主要穀類に比べ生産性(収量)が極めて低く、日本での栽培面積は低い水準にとどまる。一方、ソバは血圧上昇を抑える作用のあるルチンを多く含み、バランスの取れたアミノ酸組成を有することから、その生産が改めて見直されている。しかしながら、ソバは深刻なアレルギーを引き起こす場合があり、その原因物質(アレルゲン)を同定し取り除く研究が強く求められている。これまでに、13Sグロブリンのβ鎖(24kDa)等が主要アレルゲンとして同定されている。また、IgE抗体との反応性の違いから、ソバ13Sグロブリンのサブユニット組成を変えることで、アレルゲン性を改善できる可能性が示唆されている。そこで本研究では、ソバ種子タンパク質の組成変動を詳細に解析することにより、ソバ種子の優れた特性を損なうことなくアレルゲン性を低下させる栽培技術の確立を図るとともに、低アレルゲン品種を育成するための基礎的知見を得ることを目的とした。平成20年度は、申請者が独自に開発した高温SDS-PAGE法に他の電気泳動技術(IEF 2D-PAGE,±ME 2D-PAGE)やクロマトグラフィー等を組み合わせることで、タンパク質レベルで構造解析・組成分析を進めた。これにより、13Sグロブリンα鎖を幾つかのバンドもしくはスポットに分離できることを明らかにした。また、申請者らが独自に開発したイネグルテリンに対する抗体を予備的に用いて、13Sグロブリンα鎖をある程度分類できることを確認した。さらに、次年度以降に実施予定のDNA・RNA解析用の登熟期試料を得た。
|