研究概要 |
高活性Rubiscoの導入によりイネのRubiscoの触媒速度を高め光合成能力を改良することを目的として研究を進めている. ソルガムRbcSを導入することでイネのRubiscoの触媒速度を50%増加させることに成功したが,形質転換イネではRubisco含量が無駄に増加しており,光合成速度を高めるには至らなかった.そこで,ソルガムRbcSを高発現する形質転換イネにおけるRbcSをRNAi法でノックダウンした2重形質転換イネの作出を行った.形質転換当代のSDS-PAGEによる発現解析からRubisco含量の減少が認められた4系統を選抜し,第2世代の発現解析よりホモ系統を得た.この後代を用いて光合成速度,生育特性の解析を進めている. ソルガムRbcSの導入によりイネRubiscoの触媒速度が増加するメカニズムは不明である.RbcSで触媒作用に重要と考えられている領域はβA-βBループとC末端である.それらの領域がソルガムRbcSに置き換わったイネRbcSのキメラ遺伝子を発現する形質転換イネを作出した.後代よりホモ系統を選抜し光合成速度,生育特性の解析を進めている. 寒地型イネ科牧草チモシーはソルガムほどではないが高活性なRubiscoを持つことがわかっている.またソルガムよりもイネと相同性が高く,ソルガムRbcSとは異なる効果が期待できる.そこで,チモシーRbcS cDNAのコード領域全長を5'RACE, 3'RACE法によりクローニングし,イネに導入した.現在,形質転換当代が再分化中である. 葉緑体形質転換によるソルガムRbcLのイネへの遺伝子導入は,方法を検討しながら進めたが本年度も成功しなかった.しかし,ソルガムRbcSの導入によりRubiscoの触媒速度を高めることに成功したことから,計画当初の目的は十分に達成できたと考えられる.今後も方法を改良しながらソルガムRbcLの導入も進めていく予定である.
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