水稲多収性品種タカナリは、m^2当たり籾数が増大しても高い登熟歩合を維持するが、この原因を登熟期の乾物増加量の多少および輸送系器官の特性から究明した。 材料および方法:コシヒカリ、タカナリ、アケノホシおよびあきたこまちの計4品種を大学圃場に移植し、生育させた。3種の処理をして、登熟期に定期的に粒重を測定し、穂首節や枝梗の横断面を観察した。また、切り穂を液体培地に挿してソース能力を一定にした穂培養法を用いて、粒重増加を調査した。 結果:最も多収はタカナリN区で756g/m^2、次いでアケノホシN区の646g/m^2であった。タカナリは5万/m^2を超える籾数でも約80%の高い登熟歩合を示した。 5万粒/m^2以上の籾数を得たコシヒカリ、タカナリ、アケノホシの登熟期間乾物増加量を比較すると、最大はコシヒカリの819g/m^2で、タカナリは568g/m^2と最低だった。登熟期間の穂重増加は3品種とも大差なく、約770g/m^2であり、タカナリは計算上、199g/m^2が茎葉から穂へ移行したことになる。従って、タカナリの出穂期の乾物重が大であったことが高い登熟歩合となった一因であると推察された。 培養期間中の吸収した培地量が同じであっても、タカナリは穂重(新鮮重)増加量が他の品種よりも高い傾向にあった。培地はスクロース117mM溶液であることより、タカナリは糖からデンプンへの転換効率が高いことが示唆された。 間茎重減少量が大であったタカナリは、1次枝梗の大維管束導管部直径の総和が他品種よりも大で、輸送器官と同化産物輸送能力は密接な関係にあった。 以上より、タカナリは出穂期までに多量の炭水化物を蓄積させ、発達した輸送系、もしくは糖からデンプンへの高い転換効率を持っことで高い登熟特性を示すと推察された。
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