1071のマーカーを用いて、紋枯病抵抗性系統32Rと日本晴との交雑F2世代における遺伝的多系の解析を行い、紋枯病抵抗性に関するQTL解析を行った。病班指数との関係で解析したQTLとして第3及び第7染色体に座乗する2及び9個のQTL遺伝子の中で、Tepep(32R系統の親品種)由来の第3染色体上に座乗するRM7180と第7染色体上に座乗するRM214の有効性が高いことが明らかになった。つまり、これらのQTL、を用いた紋枯病抵抗性品種を交雑育種によって開発する可能性が示された。 紋枯病抵抗性系統32Rと感受性系統29Sは、特に幼少期において低温下での生育に違いが見られることが観察されてきた。14℃から37℃にわたり6種類の温度条件下で、これら2系統の生育特性と光合成特性について解析した。20℃以下の条件下で32Rの生育が29Sに較べて優位に大きく、光合成特性(光反応、温度反応、CO2濃度反応)及び成長関数(RGR、NAR)のいずれも32Rで優れていることが観察された。さらに、これらの違いをもたらす原因のひとつが地下部の生育量の違いであることも明らかになった。つまり、32Rが示すポリジーン由来の紋枯病抵抗性が低温下における根の生育を活性化するQTLと関連するものであることを示唆している。今後、前述の研究で同定したQTLとの関係を解析する予定であるが、本成果は幼少期の低温と生育旺盛期の高温という今後の地球温暖化にともなう気温変化に32Rで見られる紋枯病抵抗性の遺伝的背景が極めて有効であることを示唆している。
|