研究概要 |
調査した有機栽培農家における水稲の精玄米収量は平均で339g/m^2に過ぎなかった。穂数と精玄米収量の間に高い正の相関関係があり(r^2=0.69**)、有機水稲栽培における収量の制限要因は穂数であることは明らかであった。さらに、穂数と出穂前雑草乾物重(残草量)の間にも負の相関関係が認められ(r^2=0.48*)、雑草発生が穂数減の原因となったことが明らかとなった。 出穂前水稲乾物重は315g/m^2、雑草乾物重は57g/m^2であり、雑草乾物重は水稲乾物重の18%に相当した。最も優占したのはコナギであり、イヌホタルイ、オモダカも広くみられたが、ノビエは少なかった。平均で雑草乾物重の70%をコナギが占めた。コナギ乾物重が100%を占めた、いわばコナギと水稲しかない水田が8事例みられた。コナギ乾物重は少ない水田でも全雑草の19%を占め、コナギがみられない水田はなかった。コナギ乾物重が40%以下の水田は漏水田であるか慣行栽培のように中干しを早くから行う水田で、タデ類、アゼナなどが優占した。 シードバンクについてみると、コナギの中央値は51,000粒/m^2、イヌホタルイの中央値は879粒/m^2、ノビエの中央値は279粒/m^2であった。コナギが3種合計のシードバンクに占める割合は、40%〜100%の範囲にあり、中央値は96%と圧倒的にコナギが占めた。 以上から,有機栽培水田でコナギが優占しているのは、コナギシードバンクがイヌホタルイやノビエに比較して極めて大きいことが、直接の原因であると判断した。
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