チップバーンは、レタスや他の葉菜類に発生するCa^2+不足を原因とする生理障害であるが、その発生要因と発生機構は複雑多岐に渡り、統合的に理解されていない。それゆえ、レタスの抵抗性品種の育種も停滞している。本研究では、チップバーン抵抗性評価法を新たに確立し、レタスのチップバーン発生要因を詳細に調査することにより、機構解明と抵抗性品種の選抜を目指している。本年度の研究内容として、次の2項目を実施した。 1.チップバーン抵抗性評価法の開発 レタスをMS基本培地で無菌発芽させた後、0.01mMおよび1.0mMのEDTAを含む培地に植えかえ、20品種の抵抗性を診断した。この結果、クリスプヘッド、バターヘッド、およびリーフレタスの3タイプごとにチップバーン抵抗性の強い品種と弱い品種を選定した。次に、これらの6種類の成熟葉におけるチッブバーン発生率を品種養液栽培および露地裁培によって調査し、in vitro評価法との整合性を検討した。その結果、すべての組み合わせにおいて有意性が再現されることはなかったが、in vitro試験と通常の栽培試験の評価は矛盾しないと考えられた。 2.Ca^2+関連因子をコードするcDNAの検索 Ca^2+-H^+アンチポーターをコードする遺伝子CAX1について、数種類の植物のアミノ酸配列情報を基にディジェネレートプライマーを設計し、レタスからRT-PCRによるクローニングを試みた。その結果、シロイヌナズナのCAX1およびCAX3と相同性を持つcDNA断片を同定した。また、Na^+-H^+アンチポーターをコードするSOS1遺伝子のcDNA断片も同定した。アンチポーターは、幅広い金属イオンの選択性を持つことから、今後Ca^2+の輸送能を確認する必要がある。
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