低シュウ酸形質が単一の劣性遺伝子に支配されていることがこれまでの実験で明らかにされたことから、低シュウ酸形質を他の有用形質を持つ品種へ導入することが可能と考えられた。現在得られている低シュウ酸系統は、抽苔しやすい品種である`新日本'の突然変異系統であり、成長速度が遅く、抽苔しやすい特性を持っており、改良の必要があると考えられた。このことから、本年度は、晩抽性品種との交雑と、F_2世代での選抜により、抽苔性の改良および、低シュウ酸形質と成育の遅い形質の連鎖の有無について検討した。低シュウ酸系統を種子親、抽苔の遅い固定品種である`ノーベル'を花粉親とし、2009年4月上旬に播種、低シュウ酸系統は正4時間照明で、明暗期とも15℃の育成器で栽培し、`ノーベル'は20時間照明で、20℃の育成器で栽培した。F_1種子を9月上旬に播種し、14時間照明で、明暗期とも20℃の育成器で栽培して開花させ、自殖種子を採種した。2010年3月にF_1種子を播種し栽培した。第2本葉よりリーフディスクを採取し、シュウ酸濃度を測定した結果、野生型シュウ酸濃度タイプ:低シュウ酸タイプ=3:1に分離し、低シュウ酸形質の他品種への導入が行えることが明らかにされた。また、野生型シュウ酸濃度タイプと、低シュウ酸タイプの集団問には明らかな生育差はなく、低シュウ酸形質は生育には関係せず、生育の旺盛な低シュウ酸系統の育成が可能なことが示唆された。抽苔性については、現在調査中である。
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