研究概要 |
本研究は,西日本暖温帯の落葉樹二次林で頻繁に出現するケネザサ(Pleioblastus pubescens Nakai)を対象として,異なる光環境条件に対するケネザサの順応メカニズムを稈と葉群の動態,および群落レベルでの生産特性から明らかにし,どのような環境条件でケネザサの群落が持続的な景観要素として望ましいか,あるいは刈り取りなどの管理を必要とするかについて基礎的な情報を提供することを目的とした。 本年度は,稈や葉の動態,個葉の光合成特性,および個葉の光ストレス応答に関する調査研究を実施した。都市近郊二次林の林床で林冠層の構造の違いによって様々な光条件で成育するケネザサ群落を対象とするとともに,同様に異なる光条件を圃場レベルの実験設定で再現し,その実験群落も研究対象とした。その結果,葉のフェノロジーおよび葉の寿命に関しては,明るい光条件ほど葉の寿命が短いが,葉を次々と入れ替えることによって葉群を維持し,暗い条件ほど葉の寿命が長いことを明らかにした。そのような葉の動態と光合成特性の関係をみると,明るい条件ほど成長季節の光合成速度が大きく,短期間で生産量を稼いでいるのに対して,暗い条件ほど成長季節の光合成速度は小さいが,葉の寿命が長いことによって稼いでいることが明らかとなった。明るい条件ほど,冬季には低温のため光エネルギーが過剰となり,光スト,レスを受けていることを明らかにし,その光ストレスに対して,ケネザサは葉の熱散逸色素を増加させることによって,過剰な光エネルギーによる光障害を回避していることを明らかにした。
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