研究概要 |
研究代表者は,栽培イチゴの1野生種であるFragaria chiloensisの1系統CHI-24-1が24時間日長処理(自然光と日没直前から日出直後までの白熱電球による夜間連続照明)で栽培した場合に,頂芽や飼匐枝(ランナー)の先端に花芽分化し,開花することを発見しました.また,栽培イチゴ品種との交雑で,本形質が後代に遺伝することを報告しました.そこで,本野生種を育種素材として利用することにより,今までとは全く異なったイチゴ品種を育成できるものと考えました 本研究の最終目標は,従来とは全く異なった機能を持つイチゴ品種を育種し,夏期の国内イチゴ生産量を増大させることです.すなわち,自然日長条件では盛んに栄養繁殖体であるランナーを発生するため苗の増殖効率が高く,一方昼間の太陽光と夜間の連続照明で24時間日長条件にしてやると約30日で確実に花芽分化し,その後開花・結実する様なイチゴ品種の育成です.従来の四季成り品種が持つ増殖効率の悪さと花芽分化過多といった欠点を根本的に解消するもので,世界的にも全く例のないものです.具体的には,以下の2点について研究を行います (1)栽培品種と戻し交雑して得られた第1および第2世代の花芽分化,生育および収量特性の解明と優良系統の選抜 本研究を実施することにより,確実に日標とする品種の育成に近づきます.研究手法は,今までとほぼ同様ですので,実施にはほとんど問題点がありません (2)24時間日長条件で特異的に花芽分化するF.chiloensis 'CHI-24-1'の花芽誘導のアクションスペクトラの解明植物の光周性(花芽分化の日長反応)とフィトクローム制御の関係については,植物生理学的にも明確になっていません.そこで,本系統の花芽誘導に影響するアクションスペクトラを詳しく調査し,花芽分化とフィトクロームとの関係を解明にします.本研究で得られる結果は,分子生物学的な手法によりイチゴの花芽分化を解明するための手がかりになります.また,本遺伝子を有する栽培品種の花芽誘導技術の確立にも重要な情報をもたらします
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