研究概要 |
1.倍数性変異分布の調査 サルナシ自生個体の倍数性をフローサイトメトリー分析した結果,二倍性個体は房総半島を東限として西日本の低山地に分布し,四倍性個体は北海道から九州の山地に広く分布する一方,高次の六倍性個体は山形,福島,新潟の日本海側の多雪地帯の山間地に加え,あらたに長野県北部での自生が確認され分布南限とみられた. 2.倍数性変異系統の遺伝的解析 国内に分布するサルナシからrDNAのITS領域で異なる2種類の配列(typeAとtypeB)が単離された。2倍体のA. arguta var hypoleucaはtypeAの配列のみを有するが、4倍体以上では、調査した個体の全てでtypeAとtypeBの両方の配列が確認され、国内のサルナシが雑種起源である可能性が示唆された。 3.倍数性変異系統の形質評価 倍数性の増加にともない,葉および果実は大きくなり,葉柄色が赤から緑白色した.六倍性系統は低次倍数性個体に比べ,ビタミンCやポリフェノールを多く含む傾向があった. 4.キウイフルーツとの交配親和性 四倍および六倍性サルナシを種子親とした場合,六倍性デリシオサ種キウイフルーツ花粉の交配により,高率で結実と交雑実生が得られ,高い交配親和性をもつことが明らかとなった.これらの交雑実生の倍数性は両親の倍数性を反映していた. 以上の結果から,サルナシの倍数性変異の地理的分布が明確となり,高次倍数性系統の形態特性およびキウイフルーツとの交雑特性が明らかとなった.
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