研究概要 |
平成22年度の主な研究成果はつぎの通りである。 (1)Solanum grandifoliumの細胞質をもつCMS系統について稔性回復遺伝子(Rf)について遺伝分析を行った。その結果、雄性可稔(mf):雄性不稔(ms)の分離について,mfのBC実生では1:1に加えて3:1に,BC_3のms×mfでは3:1におよびmfのBC実生の自殖実生では3:1に加えて15:1にそれぞれ適合する分離が認められたことから、本Rfが、優性遺伝子でかつ互いに独立の2遺伝子が存在することおよびRfの2遺伝子座のうち一方にRfが一つでもあればmfになることが推定された。 (2)ナス'Uttara'を核親およびS.grandifoliumを細胞質親として,作出した戻し交雑第三代(BC_3)および第四代(BC_4)の雄性可稔系統(Rfをヘテロ接合型でもつ系統)の花粉をナスに受粉して作出したSmel×mfBC_3およびSmel×mfBC_4ならびにこれらの自殖実生,self-1[Smel×mfBC_3]およびself-2[Smel×mfBC_4]の合計4種類の交雑実生群について花粉稔性の調査を行った,Smel×mfBC_3およびSmel×mfBC_4は,細胞質がナスのもので,核遺伝子の遺伝的構成はナスとほぼ同一と推定されるが,花粉染色性および発芽率が対照のナスの半分以下程度しかなかった.一方,これらの自殖実生は各親系統より全体的に高くなったことから,Smel×mfBC_3およびSmel×mfBC_4の低い花粉稔性にそれぞれの花粉親(BC_3およびBC_4)の細胞質型(S.grandifolium由来の細胞質)が花粉稔性低下に大きく関与していた可能性が考えられた。 以上の2つの成果によって、S.grandifoliumの細胞質をもつCMS系統の遺伝様式および細胞質の花粉稔性への影響を明らかにできた。
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