研究概要 |
カンキツ類における体細胞雑種の多くは複二倍体のため,劣悪な形質を示すことから実用的な品種が作出されていない.近年,紫外線照射や培養変異を利用した非対称融合法が開発され,部分的なゲノムの導入が可能となってきた.昨年、コルヒチン等の変異源処理を懸濁培養細胞に行い、倍数体等の変異細胞を獲得したが、その頻度は必ずしも高いものではなかった。そこで、部分ゲノムを導入するために、半数体ブンタンの成葉から葉肉プロトプラストを単離する方法について検討し、電気細胞融合を行った。また、鹿児島早生と太田ポンカンの懸濁培養細胞由来プロトプラストにUV照射を行い、基本的な非対称融合条件について検討した。 半数体ブンタンにおいて葉肉プロトプラストの単離を検討した結果、ガラス温室内で育成した葉の収量は極めて低かったが、試験管内で接ぎ木した葉では3×105以上のプロトプラストが単離できることが明らかとなった。また、半数体ブンタン葉肉プロトプラストと鹿児島早生の懸濁培養細胞由来のプロトプラストを電気融合したところ、約5%の融合率が得られた。 次に、懸濁培養細胞由来プロトプラストにUV照射を行い、FDA染色による生存率について評価した。UV照射時間が長くなるにつれて、生存率は減少し、240sを照射すると、鹿児島早生と太田ポンカンにおいて、それぞれ47.9%と50.2%となった。現在、清見等の二倍体品種の葉肉プロトプラストとの電気融合および培養を行っている。
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