研究概要 |
半数体ブンタン葉肉とウンシュウミカン‘鹿児島早生’懸濁培養細胞由来プロトプラストとの電気細胞融合について検討した.その結果,酵素処理は半数体において減圧処理が有効であり,9時間で2.8×105cells・mL-1の収量が得られた.一方,懸濁培養細胞では減圧処理は効果が無く,6時間で最も高い収量が得られ,19.1×105cells・mL-1であった.また,それらの電気融合条件について検討したところ,パルス幅50μs,1500V・cm-1の条件下で最も高い融合率が得られ,10.6%であった.この条件において融合処理したプロトプラストを培養したところ,約1ヶ月後にはコロニーが得られ,約5ヶ月後には500μm程度の胚様体が観察された.懸濁培養細胞単独で細胞融合した対照区では胚様体の分化は確認されなかったことと,これまでの事例を合わせて考慮すると本胚様体は非対称細胞融合雑種である可能性が高い. Kunitakeら(2002)によって育成された‘ショウグン’マンダリンとL-1グレープフルーツの雑種であるSG1の遺伝的評価を行った結果,RAPDおよびCAPSマーカーにより核ゲノムの雑種性が確認された.また,果実形質について調査したところ,SG1は大果でありながら,完全な無核であり,単為結果性を有している可能性が示唆された.さらに,市販の三倍体品種‘オロブランコ’が糖度9.8%(Brix),酸度1.0%であったのに対し,SG1の糖度は6.9%で,酸度は0.9%であった. 以上のように,半数体と二倍体の融合から非対称細胞融合雑種と推定される胚様体を得た.今後,胚様体からの植物体再生について検討していく予定である.また,SG1は完全な無核であり,日本で栽培可能な新たなグレープフルーツとして期待できる.
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