研究概要 |
ナシにおける染色体研究を進展させるためには,良好な染色体標本技術の確立および再現性の高い染色体識別技術の確立が必須である.20年度においては,その観点から研究を実施した. ナシ3種(Pyrus pyrifolia(Burm.F.)Nakai, P.communis L., P.bretschneideri Rehder)6品種を供試した.材料は自然交雑実生の根端を用い,染色体標本は酵素解離法により作成し,CMA,DAPI,PIによる蛍光染色を行った.'おさゴールド'では染色体数は34本(2n=34)であった.染色体長の合計は,76.7μmで平均長は2.3μmであった.各染色体の相対長は,2.0%(1,5μm)から4.3%(3.3μm)まで連続的に分布した.CMA染色では,4本の染色体の端部にCMA+バンドが出現した.DAPI染色するとCMA+の部分の染色は不良で,DAPI-バンドとみなせた.PI染色ではバンドは確認できなかった.CMAがグアニンおよびシトシンに特異的で,DAPIがアデニンおよびチミン特異的,PIが塩基特異的でないことから,'おさゴールド'で確認できるCMA+バンド領域は,グアニンおよびシトシンが豊富な領域であると判断できた.'おさゴールド'以外の3種5品種においても染色体数は34本(2n=34)であり,CMA+バンド領域の位置および数に,種・品種間差異は認められなかった.このことから,ナシにおいては,種を通してCMA+が4本の染色体の端部に存在する共通のバンドパターンを備えることが解明でき,CMAバンドパターンの点からは,染色体の種・品種間の多様性は低いことが推察できた.さらに,ナシ染色体おける分子生物学的研究の進展を図るため,染色体上での遺伝子の位置を検出する方法である蛍光in situハイブリダイゼーション技術の確立を図った。
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