研究概要 |
園芸植物にモリブデンを施用して植物体内に吸収させ、モリブデンと花弁に含まれるアントシアニン色素との結合によって赤色系の花色を青色化させる栽培技術について、その機構を明らかにするためにアントシアニン溶液にモリブデン酸ナトリウム溶液を加え、深色効果が生じる条件とモル比を調査した。モリブデンとシアニジン配糖体を混合した場合は1:3のモル比のときに、またデルフィニジン配糖体の場合は1:1のモル比のときに最も深色効果が高く、青色化効果の高いモリブデンとの比率はアグリコンのB環の状態によって異なり、異なった結合様式であることが示唆された。さらに配糖体の種類によっても、モリブデンによる青色化の効果に違いがあり、シアニジン-3,5-ジグルコシドは深色効果が高かったが、シアニジン-3-ルチノシドは深色効果が弱かった。この青色化はpH4~6の溶液で特徴的に生じ、強酸性条件下では深色効果が見られなかった。さらにアントシアニンの種類によってはモリブデンとの混合により濃色効果も見出された。 キク花弁切片についてモリブデン溶液に浸漬させたところ、アントシアニン組成とモリブデンによる青色化との関係ははっきりしなかったが、液胞内に共存するフラボノイド色素の量が少ないときにより鮮やかに花弁が青色化することが分かった。モリブデンによる園芸作物の青色化を試みる場合は共存するフラボノイド色素量についても考慮する必要があることが示唆された。
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