研究概要 |
本年度は,チョウの行動特性から屋上空間へのチョウの誘引に有効な壁面緑化のあり方を探った。調査対象地は大阪府立大学中百舌鳥キャンパス内の生命環境科学部棟とした。2009年度に実施した南東側植栽帯の不連続部分に対し、2010年度では南側の連続植栽部分に壁面緑化を施した。壁面特性を探る実験区として,(1)庇のみ緑化区、(2)上面造花区、(3)テープ区、(4)対照区(誘引材を設置しない)の4区を設定し調査を実施した。チョウの行動特性は、ナミハゲバとアオスジハゲを対象とした一個体追跡調査を各実験区3日ずつ計18日行い,飛行ルート,飛行の高さ,飛行の速さを記録した。その結果をもとに、行動特性と空間特性および壁面特性との関係を解析した. 調査の結果、両種とも地表面がアスファルトで舗装された空間を相対的に速く飛行し,植栽帯において,ナミアゲハは樹木を横に見ながら飛行し,アオスジアゲハは樹木を下に見て飛行する傾向が読み取れた.しかし、2009年の研究では、植樹帯の不連続部において壁面緑化にナミハゲハの飛行速度が抑制され、壁面へ誘引する効果がみられたが、植栽帯が連続している2010度の研究ではそのような効果はみられなかった。したがって、壁面緑化によるチョウの誘引を行う場合は、壁面に隣接する植栽帯の連続性や、チョウの視認性などを考慮する必要がある。 さらに、これまでの研究成果を含め、研究内容を総括した。
|