研究概要 |
(1)AVR-Pia遺伝子の単離 これまでにIna168株由来の1199bpのDNA領域(領域Vm)に, AVR-Piaが存在すると考えられていた. DNA領域Vmを5'末端から欠失させた702bpの領域(領域Vq)をPCRにより増幅し, 愛知旭に対して病原性をもつIna168m95-1株に形質転換した. 愛知旭に対する接種試験の結果, この領域Vqは非病原性を相補した. 本領域内には大小14のORFが存在しており, これらに対して1塩基挿入によるフレームシフトを6箇所導入した. そして, 形質転換体を作成し, 接種試験を行った結果, 最大長である255bpのORFがAVR-Piaであると証明した. (2)AVR-Piaの染色体地図上へのマッピング 安田伸子氏(中央農業総合研究センター)より, AVR-Piaの遺伝解析(Yasuda et.al., 2006)に用いた中国産菌株の交配後代を分譲していただき, 日本産菌株と中国産菌株のAVR-Piaが同一であるか, 本研究で得たAVR-Pia領域をプローブとしたRFLPと愛知旭への病原性の後代における分離の比較を行った. その結果, 両者が一致し, Ina168のAVR-Piaと中国産菌株のAVR-Piaは同一の遺伝子であることが示された. (3)AVR-Pia領域の構造の解明 AVR-Pia遺伝子を含むより広いDNA領域を取得するために, クローン46F3に隣接したコスミドクローン9E12を得た. 配列を決定したところ, 9E12は46F3の5'側に位置し, 両者を併せて53kbにわたる領域が明らかになった. 9E12中には, トランスポゾンOccan全長と, レトロトランスポゾンMINEが含まれていた. また, サザン解析の結果, Ina168株中には合計3コピーのAVR-Pia遺伝子があり, 変異株Ina168m95-1では全てのコピーが欠失していることがわかった.
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