研究概要 |
(1)AVR-Pia遺伝子発現,産物の特徴付け AVR-PiaとGFPの間にスペーサーとなるアミノ酸配列(GGS)を入れ,それぞれの機能を阻害しないように工夫したベクターを作成し,Ina168m95-1に形質転換で導入した.スペーサーを12アミノ酸にしたところ,AVR-Piaの機能が相補された.この形質転換体を親和性イネである新2号に非切断葉鞘裏面接種し,蛍光顕微鏡観察を行った.その結果,AVR-Piaタンパク質は接種後24時間以降,侵入菌糸で検出された.まず,付着器形成後の初期侵入菌糸の先端に,その後侵入菌糸が球状に分化した後は,BIC(Biotrophic interfacial complex)に局在することが明らかとなった.一方,シグナル配列を除去したAVR-Piaタンパクは侵入菌糸全体に分布した.いもち病菌の他のエフェクターはBICを介してイネ細胞に分泌されることが知られていることから,AVR-PiaもBICを介して分泌され,さらにシグナル配列がBICへの局在と分泌に重要であることが示唆された. (2)Inal68m95-1の欠失領域の特定と,変異様式の解明 昨年度解析したm95-1株のAVR-Pia欠失部位の両端の配列を得ることが出来た.新たに得られた5'側の配列は,Inal68においても保存されていた.詳細な解析の結果,m95-1株における3コピーのAVR-Piaの欠失は,AVR-Piaの両側に位置する2コピーのOccanの間での相同組換えによって起こったことが明らかとなった. (3)圃場分離株における変異様式の解明と,病原性判定システムの構築 これまでの解析結果より日本産菌株におけるAVR-Piaの存在形態には点変異は存在せず,野生型コピーを保有するか,しないかの2通りであることが示唆された.AVR-Piaを増幅するプライマーによるPCR方が病原性判定システムとして使用できると考えられた. (4)AVR-Piaタンパク質の相互作用の解析 Yeast two hybrid解析の結果,AVR-PiaはイネPia遺伝子であるRGA4,RGA5の産物とは相互作用しないが,AVR-Piaタンパク分子間の相互作用があることが明らかとなった.
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