研究課題
ファイトプラズマ(Phytoplasma asteris)は植物の篩部細胞内に寄生する病原細菌であるが、その病原性発現メカニズムは未だに謎に包まれている。本研究ではゲノム情報を活用したポストゲノム解析を通して、ファイトプラズマの病原性に関与する遺伝子を同定するとともに、病徴発現に至るメカニズムを明らかにすることを目的としている。ファイトプラズマは宿主の細胞内に寄生し、またペプチドグリカン等の外膜を持たないという特徴がある。従って、ファイトプラズマから分泌されるタンパク質や、細胞膜上に局在する膜タンパク質は宿主細胞質で直接的に機能し、これらと宿主因子との相互作用が病徴発現に大きく関与すると考えられる。そこで今年度は、これらの病原性因子候補のうちのいくつかについて、ファイトプラズマ感染宿主内における発現を観察した。プラスミド上にコードされる膜タンパク質ORF3に対する抗体を作出し、OY-M感染植物および感染昆虫について免疫組織化学的解析を行ったところ、感染植物と比較して感染昆虫では、1/100の抗体濃度でも検出が可能であった。また、OY-NIM感染植物および健全植物については、ORF3の発現は全く認められなかった。これらの結果は、ORF3が昆虫宿主感染時に特に発現レベルが高いことを示しており、昆虫宿主におけるORF3の機能的重要性が示唆された。一方、ゲノム上にコードされる分泌タンパク質PAM765について、OY-M感染植物および感染昆虫における発現量を、リアルタイムPGRを用いて定量解析した。その結果、感染植物体内での発現量の方が有意に高いことが示唆され、PAM765遺伝子が植物感染時に重要な機能を持つ可能性が考えられた。
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