研究概要 |
本研究は、重要作物であるイネに重大な被害をたらすイネいもち病菌と、生活環境に広く存在し、かつ植物病原菌としても重要であるアルタナリア菌の生育を抑制するマイコウイルスに着目して、これらを新しい植物病原菌防除法のツールとして開発することを目的とする。イネいもち病菌マイコウイルスは4成分の2本鎖RNAゲノムを有するものが多い。これらマイコウイルスのうち、3.6kbp,3.2kbp,2.9kbp,2.8kbpのサイズの2本鎖RNAは分節パターンからクリソウイルス科に分類されることが示唆され、MoCV1 (M__-agnaporthe o__-ryzae C__-hrysov__-irus)と称した。MoCV1ウイルス粒子の精製を行い、抗ウイルス粒子抗体を作製し、抗体を用いたウイルス粒子の検出システムの構築に着手した。特にMoCV1は長期間の培養を続けると液体培養上清中にウイルス粒子が存在するようになるが、作製した抗体を利用したELISA法によるマイコウイルスの検出系の構築により、この現象が生じるメカニズムについて明らかにしていく。アルタナリア・アルタナータ菌に関しては、鳥取大学植物病理学研究室から新たに分譲を受けた16株のうち、6株から新規なマイコウイルス由来の2本鎖RNAの検出に成功した。これらのうち、1株については単胞子分離法による治癒処理により完全ウイルスフリー株の取得に成功した。また他のウイルス混合感染株1株については一部ウイルス脱落株の作出にも成功した。完全ウイルスフリー株やウイルス一部脱落株は、オリジナル感染株と比較すると明らかに生育状況が異なり、これら新規なマイコウイルスも宿主であるアルタナリア・アルタナータ菌の生育に影響を与えることが明らかとなった。
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