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前年度において、WIPKとSIPKは接種葉におけるTMVの増殖に対する局所抵抗性を負に制御する一方、全身抵抗性を正に制御することを明らかにした。この成果を受けて、本年度は、TMV抵抗性のシグナル物質であるサリチル酸とジャスモン酸の誘導に果たすWIPKとSIPKの役割を明らかにすることを目的に研究を進めた。まず、WIPKとSIPKがTMV感染に応じたサリチル酸及びジャスモン酸の生産に関与しているか否かを検証するために、WIPKとSIPKの発現が抑制されたタバコ(TMV抵抗性Nを保有する)にTMVを接種し、接種葉における両物質の蓄積を調べた。その結果、上記抑制タバコでは、野生型タバコと比較して高含量のサリチル酸の蓄積が観察されたのに対し、ジャスモン酸については蓄積量が減少していた。上記結果は、WIPKとSIPKがサリチル酸の蓄積を負に、ジャスモン酸の蓄積を正に制御していることを示唆した。次いで、WIPKとSIPKがサリチル酸生合成の引き金に関与しているのか否かを検証するために、TMV感染に伴う過敏感反応の誘導時におけるWIPKとSIPKの活性化とサリチル酸・ジャスモン酸の蓄積の時間的関係を野生型タバコを用いて解析した。その結果、最初にサリチル酸の蓄積が起こり、次いでWIPKとSIPKの活性化、ジャスモン酸の蓄積が起こることが判明した。これらの結果を考え合わせると、WIPKとSIPKはサリチル酸の生合成ではなく蓄積を負に制御し、ジャスモン酸の蓄積を正に制御することが示唆された。このように、WIPKとSIPKはサリチル酸とジャスモン酸の蓄積を制御することでTMV抵抗性に関与することが判明した。
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