今年度、新たに構築した新規なエフェクター遺伝子探索システムを用いて、青枯病菌Ralstonia solanacearumのIII型エフェクター遺伝子をほぼ全て同定することに成功した。これまでの解析から見出していた44種類のエフェクター遺伝子に加え、新しく28種類のエフェクターを新規に同定した。総数で72種類のエフェクターを同定し、エフェクターの存在が明らかとなっている動植物病原細菌の中で最も多数のエフェクターを有することを世界で初めて明らかにした。このエフェクター数の多さが本菌の広範な宿主域とそれが変化しやすい原因となっていると考えられる。新規同定したエフェクターについても形質転換シロイヌナズナラインの選抜を行い、エフェクター機能の表現型解析の材料となる基盤整備を進めた。 新規同定した28種類のエフェクター遺伝子をカセット化し、これらを酵母細胞内で発現させて小胞輸送を阻害する活性を有するエフェクターを探索したところ、新たに1つの小胞輸送阻害エフェクターを見出した。自然宿主であるナス科作物に対する小胞輸送阻害エフェクターの機能を調べるために青枯病菌のエフェクター遺伝子破壊株を作出した。これら変異株の病原性は野生株とほぼ同じであることから、重複欠損変異株の構築を行った。また、一過的発現系を用いて各種のナス科作物で小胞輸送阻害エフェクターを発現させたところ、宿主特異的な作用(毒性)を示すエフェクターを見出した。新たなタイプのエフェクターとして注目しており、来年度集中的に解析する。
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