これまでの解析でほぼ網羅に成功した青枯病菌Ralstonia solanacearumのIII型エフェクター(総数72種類)に関して、遺伝子をカセット化し、酵母並びに植物の細胞内で発現させて機能解析を行った。酵母構成的発現系を用いた解析から、酵母細胞の液胞への選択的小胞輸送を強力に阻害する活性を持つエフェクターを8種類同定した。これらの中には、R. solanacearumで大きな遺伝子ファミリーを構成しているエフェクターが含まれており、ファミリーメンバーすべてが同じ活性を有していることが明らかになった。類似エフェクターはXanthomonas属細菌にも分布しており、大変興味深い。 植物細胞内でこれらのエフェクターを一過的に発現させたところ、植物に壊死様反応が見られた。誘導発現系を利用して形質転換植物を作出したところ、小胞輸送阻害エフェクターのほとんどで、形質転換植物の生育阻害が観察された。一過的発現系を利用して、植物の小胞輸送を介した抵抗反応へのこれらエフェクターの作用効果を検討した結果、PAMPによるカロース蓄積を阻害する活性を有するエフェクターを見出すことに成功した。 小胞輸送阻害活性を有するエフェクターの遺伝子を欠損した遺伝子破壊株を作出した。上述のエフェクターファミリーのメンバー全てを欠損させた重複遺伝子破壊株を作出したが、宿主ナス植物に対する病原性は大きく変化しなかった。機能的に重複したエフェクターがほかに存在することから、現在、これらのエフェクターをすべて欠損させた菌株の作出を進めている。
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