研究課題
カイコで見つかった哺乳類TIA-1のホモローグであるBmTRN-1タンパク質は、RNA認識領域(RRM)を持つRNA結合タンパク質であり、その遺伝子発現抑制による解析から、転写産物の制御に関わることが考えられる。カイコの転写後調節機構を明らかにする目的で、ウイルス感染過程におけるBmTRN-1の転写後調節における役割や、細胞内局在の変化について調べた。カイコに強い感染性を示すバキュロウイルスであるBmNPVを感染させた細胞では、GFP融合BmTRN-1タンパク質は細胞質において明確な多数の凝集体を形成した。弱毒性バキュロウイルス感染細胞におけるBmTRN-1タンパク質の核内分布の現象とこの結果は大きく異なるものであるが、このことはこれらウイルスの感染性の強さに起因すると考えられる。感染後48時間後にはこの凝集体を持つ細胞の割合は、75%に達した。また、C末端側のAuxiliary domainを欠失させた場合に、このような凝集体は形成されなくなった。BmTRN-1タンパク質過剰発現細胞において、ウイルスのタンパク質生産量やウイルス転写産物量が低下したことから、強毒性ウイルス感染が引き金となって起こる凝集体形成による転写産物の安定性の低下によってウイルス感染細胞のタンパク質生産量を低下させる役目をBmTRN-1は担っていると考えられる。BmTRN-1のRRM領域とAuxiliary domainに変異を持つ変異体タンパク質過剰発現細胞では、BmNPVのタンパク質発現量が増大したことから、このようなRRM領域の一部には転写産物を安定に保ち、核-細胞質問の効率的な輸送を助ける働きもあると考えられる。
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Journal of Insect Biotechnology and Sericology 78
ページ: 39-51
Biomaterials 30
ページ: 4297-4308