研究課題
カイコから見つかったほ乳類TIA-1相同性タンパク質(BmTRN-1)は、RNA認識領域(RRM)を有するRNA結合タンパク質である。遺伝子解析および発現抑制による解析から、このBmTRN-1は42.5kDaおよび44.1kDaのアイソフォームを持ち、転写産物の働きを調節する役目を持つと考えられる。細胞内転写産物の急激な変化が見られるバキュロウイルス感染細胞における機能を解明するため、ウイルス感染によるBmTRN-1の分布・局在変化を調べ、また細胞内で相互作用するタンパク質についての検索を行った。BmTRN-1タンパク質は正常細胞内では、核と細胞質の両方に分布するが、RRM領域のRNA認識配列に変異を含む場合、核と細胞質における分布に変化が生じた。したがってBmTRN-1の細胞内分布には剛A結合活性が重要であると考えられる。BmTRN-1過剰発現細胞では、バキュロウイルス感染時のポリヘドリンプロモーターからのタンパク質発現量の低下が見られ、この際に、細胞質においてBmTRN-1を含む凝集体の形成も観察された。このウイルス感染細胞内から得られる比較的難溶なタンパク質試料を用いてプルダウン法により調べたところ、BmTRN-1と共沈する因子としてBmNPV由来の核酸認識に関わるタンパク質の一つが見いだされた。したがって、BmTRN-1タンパク質はバキュロウイルス感染過程の細胞において、ウイルス由来のタンパク質と相互作用することによって、細胞質凝集体形成に関わるとともに、ウイルスのタンパク質発現量を低下させることが示唆された。
すべて 2010
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Journal of.Insect Biotechnology and Sericology.
巻: 79 ページ: 15-20