研究概要 |
(研究の目的)昆虫は、その微小な脳のなかの特定の細胞で神経ペプチドホルモン、時計関連遺伝子などを合成している。これらの神経ペプチドや時計関連蛋白質は、温度や光などの刺激を受けて、脳の特定の細胞で合成される。そして最終的には、昆虫特異的な現象である羽化、休眠、変態を引き起こす。本研究では、これら神経ペプチドや生物時計関連蛋白質の合成・分泌機構の解明を最終的な目標として、蛋白質の細胞内輸送に関与する低分子量GTP結合蛋白質の一種であるrabに焦点を合わせて研究を行った。 (研究内容)まず、カイコの脳からmRNAを抽出後、RT-PCRを用いて4種類のrabのcDNAを得た(rab11,rab7,rab6,rab10)。次に、これらのcDNAを大腸菌の発現用ベクターに挿入し、大腸菌を形質転換させた。それぞれの蛋白質を大腸菌内で発現・誘導、アフイニテイーカラムクロマトグラフイーにより精製後、それらを抗原にし、マウスとウサギを用いて抗体を作成した。この抗体を用いて各種カイコの組織のイムノブロッテイングを行ったところ、rab11は、全組織に、rab7は脳、精巣、卵巣に発現した。また、カイコの脳の組織切片を用いて免疫組織化学的解析を行ったところ、rab7とrab11は、脳内の特定の細胞で発現していた。次に、抗体を用いた蛍光2重染色法を行ったところ、Rab7とrab11は、カイコの脳内の同じ細胞で発現していることが明らかとなった。 rab6,rab10,rab14,rab1についても、それぞれ大腸菌で発現・誘導させ、精製後、それらの蛋白質を電気泳動により、確認した。
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