土壌害虫に対する生物的防除資材として用いられる昆虫病原性線虫の病原性は共生細菌に大きく依存する。そこで殺虫活性の高い共生細菌株を得るため、線虫から共生細菌を単離・培養し、スクリーニングを行ったところ、既知のものに比べて極めて高い殺虫活性を示す2つの分離株が得られた。本研究では、その新規Photorhabdus属細菌分離株について、殺虫活性に関する病原性因子およびPhotorhabdus属細菌の感染による宿主昆虫の応答反応を解析し、本分離株が強病原性を示す要因とそれによって宿主昆虫が死亡する過程を解明する。 細菌の生存力や増殖力について比較するため、まず当研究室で分離した強病原性系統CbKj163およびOnlr40と一般的な病原性系統Itを用いて、ジャイアントミールワームならびにアワヨトウの終齢幼虫に注入した際、いずれの強病原性系統も一般的な系統よりも1/10000の濃度を注入した場合でも100%の死亡率が見られた.アワヨトウの場合はいずれの細菌を注入した際も死亡率は高かったが、昆虫が死亡するまでの時間が強病原性の方が顕著に短かった。強病原性系統CbKj163と一般的な病原性系統ltについて、細菌の増殖率の違いが昆虫体内での定着率や増殖率に関与していると考え、増殖速度を比較したところ、LB液体培養中では両者に違いは見られなかった。しかし、LB培地中で培養後、菌体をアワヨトウに注入した際には大きな違いがみられ、強病原性の方が初期の増殖速度は速かった。その増殖速度の違いを解明するため、細菌の持つ溶血能力、脂質分解能力、タンパク質分解能力を比較した結果、いずれにおいても強病原性の方が優れていた。強病原性の持つこれらの高い酵素活性によって、昆虫体内での定着並びに増殖能力が高くなり、強病原性につながる可能性が示唆された。
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