土壌害虫に対する生物的防除資材として用いられるHeterhabditis属昆虫病原性線虫は特殊なPhotorhabdus属の腸内細菌と相互依存的共生関係をもちPhotorhabdus属細菌は昆虫の血体腔内で増殖し、昆虫を死亡させることが知られているが実際の殺虫機構については不明な点が多い。また、私たちが見出した強病原性の新規Photorhabdus属細菌の分離株についての病原因子は全く明らかになっていない。そこでその強病原性のPhotorhabdus属細菌分離株のもつ強病原性について、神経系ならびに腸へ及ぼす影響を中心に明らかにする事を目的として研究を行った。 神経系へ与える影響として脳内アミンの変化を調べたところ強病原性細菌の感染後には、脳内に未同定のアミン様物質が急激に出現し、それは別の強いストレス応答時にも検出されることが明らかとなった。また脳特異的ではなく、他の組織においても強いストレス条件下でそのアミン様物質が検出されることが明らかになった。しかし、その同定にはいたらなかった。また、そのような共生細菌の感染時ならびに強いストレス条件下での組織における構造上の違いを検出するには至らなかった。 本研究では病原性に関与すると考えられる遺伝子発現を明らかにするため、PKS遺伝子のクローニングも試みたが、成功しなかった。人に日和見感染するP.asymbioticaではP.luminescenceでみられる病原性に関与するとされる領域がないことが知られており、同亜種と考えられる本分離株でも同様の可能性がある。今後、このPhotorhabdus分離株のゲノムを解析していてくことによって、新規の病原性因子の共通点および相違点を明らかにする必要がある。
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