研究概要 |
アワヨトウフェロモン腺からアルコールアセチルトランスフェラーゼ(AAT)遺伝子を効率よく単離するためには、この遺伝子の転写レベルが最も高い時期のフェロモン腺を用いてcDNAライブラリーを作製すべきであるが、AAT遺伝子の発現時期は不明である。一方、これまでのカイコガの研究から、desatlやpgFARのようなフェロモン生合成酵素遺伝子は同調的に転写レベルが上昇することが分かっており、実際に両遺伝子の転写レベルの最も高い羽化一日目のカイコガフェロモン腺cDNAライブラリーからは、desatlやpgFARを含むフェロモン産生関連遺伝子のESTクローンが多数得られている。そこでアワヨトウでも同じ事象が見られると仮定し、まずdegenerate RT-PCRなどによりアワヨトウフェロモン腺からΔ11脂肪酸飽和化酵素遺伝子の単離を試みた結果、カイコガdesatlを67.1%の相同性を有するcDNAクローンを得た。さらにバキュロウイルス発現系を利用して機能解析を行った結果、この酵素がΔ11脂肪酸飽和化活性を有していることが明らかとなった。またRT-PCR解析を行った結果、この遺伝子の転写レベルが羽化3日目に最も高いことがわかったことから、羽化3日目のメスのアワヨトウ1,009頭からフェロモン腺を含む腹部末端組織を摘出してtotalRNAを調製し、これをもとにノーマライズドcDNAライブラリーを作製した。さらにランダムに選抜した約2,000クローンについて5'末端の塩基配列解析を行った。現在、これらのESTクローンとカイコガフェロモン腺のESTクローンの比較を行っており、これまでにAAT遺伝子の候補となる15個のアワヨトウ特異的ESTクローンが得られた。
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