研究概要 |
アワヨトウ(Pseudaletia separata)の性フェロモンの主要成分(Z)-11-hexadecenyl acetateは、パルミチン酸から連続した3段階の反応、すなわち(1)11位の不飽和化、(2)アシル基の還元、および(3)末端OH基のアセチル化によって生合成され、それぞれの反応には脂肪酸不飽和化酵素、アシル基還元酵素、およびアルコールアセチルトランスフェラーゼ(AAT)が関与する。一方、カイコガの性フェロモン生合成経路では(1)と(2)の反応はあるが(3)の反応がないことから、両ガ類のフェロモン腺ESTクローンを比較した場合、AATはアワヨトウでのみ見出されるはずである。そこで前年度は、アワヨトウフェロモン腺のノーマライズドcDNAライブラリーからランダムに選抜した約2,000クローンについて塩基配列解析を行い、さらにそれらについてカイコガのESTデータベースを用いて相同性検索を行った。次にその一部についてアワヨトウでのみ見出されるクローンをAAT喉補遺伝子として選抜した結果、15の候補遺伝子が得られた。今年度は引き続きAAT候補遺伝子の選抜を行った結果、新たに23の候補遺伝子が得られたことから、計38の候補遺伝子に特異的なプライマーを用い、様々な組織についてRT-PCR解析を行った。その結果、フェロモン腺を含むアワヨトウ腹部末端で優先的に発現する5つの遺伝子が明らかとなった。そのうち、最も転写レベルの高い遺伝子に着目し、3'末端および5'末端の塩基配列を決定した結果、この遺伝子は384アミノ酸残基からなる蛋白質をコードしていることが明らかとなった。
|