研究概要 |
アワヨトウ(Pseudaletia separata)の性フェロモン主要成分(Z)-11-hexadecenyl acetateはパルミチン酸から連続した3段階の反応、すなわち(1)11位の不飽和化、(2)アシル基の還元、および(3)末端OH基のアセチル化によって生合成され、アルコールアセチルトランスフェラーゼ(AAT)は(3)に関与する。カイコガの性フェロモン生合成経路では(1)と(2)はあるが、(3)がないことから、この2種のガのEST解析でAATはアワヨトウでのみ見出されるはずである。そこで前年度までにアワヨトウ腹部末端のtotal RNAを用いて標準化cDNAライブラリーを作成し、他の組織に比べて腹部末端で優先的に発現し、かつカイコガESTクローンと相同性が無い5種類の新規遺伝子を得た。 今年度は腹部末端における詳細な発現部位解析を行ったところ、前述の5種類の新規遺伝子のうち2種類が(1)に関わる遺伝子(PsΔ11、論文執筆中)と同じ部位で発現していることが分かり、これらをAAT候補遺伝子とした。その一方で、根本的な問題として上述の2,000クローン中にPsΔ11が見出されなかったことから、改めてPsΔ11の発現レベルの高い腹部末端の部位を外科的に摘出してpoly(A)+RNAを抽出し、cDNAライブラリーを再作製した。ランダムに選んだ1,000クローンについてEST解析した結果、新しいライブラリーからPsΔ11などカイコガフェロモンESTクローンと相同性,が高いクローンを多数得た。そこでAAT候補遺伝子を探索した結果、ヨトウガ(Mamestra brassicae)でのみ単離されている機能未知遺伝子と相同性が高いクローンを得た。ヨトウガのフェロモン生合成経路にも(3)があることから、これを3つ目のAAT候補遺伝子とした。
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