微細緑藻Chlorella vulgaris NIES-227株と土壌細菌との共存培養系から分離・培養された細菌の分類・同定を行った。16S rRNA遺伝子の塩基配列に基づく系統関係、脂肪酸組成、キノン組成、ゲノムDNA相同性といった、細菌の分類の指標となるいくつかの性状を調査し検討した結果、分離株のぶちVariovorax属およびCaulobacter属に属す分離株が新種であると判定した(投稿準備中)。 ビタミンB_<12>要求性の微細緑藻Monomastix minuta NIES-255株と共存させて培養することにより、この緑藻にビタミンB_<12>を供給することができる土壌細菌2株を、昨年度までに分離した。その1つ、Ensifer sp.CSBa株について、今年度は、ビタミンB_<12>の合成に関わる遺伝子を特定した。このCSBa株は、合計22のビタミンB_<12>合成系遺伝子を保有していることが明らかとなった。得られた遺伝情報は、今後、ビタミンB_<12>要求性の微細緑藻と本細菌との共生関係をさらに詳しく調査するための鍵となるだろう。すなわち、ビタミンB_<12>合成系遺伝子の塩基配列が判明したため、それらの遺伝子を対象としたPCR用プライマーの設計が可能となり、共生によってそれらの遺伝子の発現量がどのように制御されるのか試験することが可能となった。本研究期間内に発現量の試験までは及ばなかったが、このEnsifer sp.CSBa株を菌株分譲機関に寄託し、ほかの研究者が利用できるようにする予定であり、それによって学術への一定の貢献が達成される。
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