研究概要 |
湛水土壌の酸化還元境界層はメタン酸化が活発な環境であり、メタンの大気放出を制御する重要なフィルターとして働いている。研究代表者は、メタン酸化をめぐる微生物間の相互作用に注目して研究を進めており、メタン酸化が水田土壌の微生物食物連鎖の基点となること、土壌原生動物の捕食はメタン酸化菌の種類によって選択性があること、をこれまで明らかにしてきた。本課題では、原生動物がメタン酸化細菌の活性や群集構造に及ぼす影響をモデル実験で検討した。土壌中のメタン酸化細菌を接種源として得るため、メタン雰囲気下で培養した水田土壌からブレンダーによる分散とろ過(<2μm)により微生物を分離した。分離した微生物群集のメタン酸化能を確認するとともに、pmoA遺伝子を対象としたPCR-RFLP解析により得られたメタン酸化菌群がもともとの土壌の群集を反映していることを確かめた。上記の接種源を単独で、あるいは同じ土壌から分離した原生動物(繊毛虫1種類[Colpoda属]、鞭毛虫3種類[Cercomonas属,Spumella属および未同定種]、アメーバ4種類[Acanthamoeba属,Platyamoeba属,Paravahlkampfia属および未同定のheterolobosea])とともに殺菌土壌に加え、湛水土壌の酸化還元層を模したミクロコズムで培養し、メタン酸化活性を測定するとともに培養後の土壌の微生物群集の解析を行った。原生動物の有無にかかわらず、培養開始6日目からメタンの酸化が観察された。最初は原生動物を加えたミクロコズムでやや活性が高い傾向が認められたが、メタン酸化が活発になった12日目以降は原生動物の影響は認められなかった。培養20日後に土壌のメタン酸化細菌群集を解析した結果、原生動物が群集構造に影響を与えている可能性が示唆された。
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