酵母を使ってイネおよびオオムギのアクアポリンのヒ素の輸送活性を同定/評価する系を構築した。3種のヒ素高感受性変異酵母株をヒ素(ヒ酸ニナトリウム)を含んだ培地で生育させた結果、ACR3変異株が顕著に強いヒ素感受性を示すことが明らかとなり、この株を解析に用いる事を決定した。より高濃度領域でヒ素を輸送する可能性も考慮し、親株である野生株(BY4741)も並行して使用することとした。 当研究室では、昨年度末までにオオムギから計21種のアクアポリンcDNA(HvAQP cDNA)を単離することに成功した。各HvAQP cDNAを、酵母発現ベクターであるpYES2の下流に連結し、それらのプラスミドで酵母ACR3およびBY4741株を形質転換しだ。各形質転換体、独立3クローンを0.1mM (ACR3)、5mM (BY4741)のヒ素がそれぞれ含まれている選択培地上に塗布し、ガラクトースによってHvAQPタンパク質の発現を誘導させた。その結果、この実験系において顕著に各酵母株のヒ素感受性を高めるcDNA種は存在しなかった。今回用いたヒ酸ニナトリウムは、ヒ素の形態として、外環境pHの状況に応じて、本実験の目的対象である亜ヒ酸を供給する一方、主としてヒ酸を供給する。今後の実験においては、主として亜ヒ酸を供給する三酸化二ヒ素を用いて、同様の解析を行う予定である。 イネには、33種のアクアポリン遺伝子(OsAQP)が存在すると報告されている。現在までに15種類のOsAQP cDNAを入手してpYES2ベクターに連結済みである。残りのOsAQP cDNAに関しても21年度中に全て入手し、全イネアクアポリンについて速やかに酵母のヒ素感受性試験に用いる予定である。
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