研究概要 |
本研究は亜ヒ酸輸送活性をもつアクアポリン遺伝子をイネおよびオオムギで同定することを目的としている。本プロジェクトでは亜ヒ酸輸送活性をもつ植物アクアポリンをヒ素感受性酵母変異体を用いてスクリーニングする実験系を組んだ。アクアポリンは酵母発現用ベクターpYES2に組み込んだ。酵母株はヒ素感受性変異体acr3を用いた。対照として野生型株(BY4771)も用いた。アクアポリンを組み入れていないYES2(空ベクター)を導入した酵母では、亜ヒ酸添加によって生育が阻害される濃度(閾値)はBY4771株で0.125mM、acr3株で5μMであった。この濃度を選択培地の亜ヒ酸濃度とした。 オムギのアクアポリン遺伝子を順次pYES2に組み込み、構築したベクターにより酢酸リチウム方で酵母BY4771株およびacr3株をそれぞれ形質転換した。亜ヒ酸含有選択培地下で感受性検定を行ったアクアポリンは以下の18遺伝子である。 HvPIP1 ; 1, HvPIP1 ; 2, HvPIP1 ; 4, HvPIP1 ; 5, HvPIP2 ; 1, HvPIP2 ; 4, HvPIP2 ; 5, HvTIP1 ; 1, HvTIP1 ; 2, HvTIP2 ; 1, HvTIP2 ; 2, HvTIP3 ; 1, HvTIP4 ; 1, HvTIP5 ; 1, HvNIP1 ; 1, HvNIP1 ; 2, HvNIP2 ; 1 またHvPIP2 ; 4についてはBY4771株のみ形質転換体を得ている。 現在までのところ、残念ながら亜ヒ酸感受性が変化した形質転換酵母(すなわち亜ヒ酸を透過させると可能性があるアクアポリン遺伝子)は同定されていない。 今後はスクリーニング条件を再検討して、上記18種類のアクアポリンを再スクリーニングを試みる。また未調査のオオムギアクアポリン3種類およびイネ・アクアポリン約30種類について新規にスクリーニングを進める。 本年度中に酵母スクリーニング系で亜ヒ酸輸送活性をもっアクアポリンが同定できていたらその輸送系の特徴(輸送活性、基質選択性など)について酵母発現系あるいはアフリカツメガエル卵母細胞系で測定する予定であった。しかしこれは現在までこれらの測定は実施できていない。
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