研究概要 |
本研究では亜ヒ酸輸送活性をもつアクアポリン遺伝子をイネおよびオオムギで同定することを目的とした。このためにアクアポリン遺伝子を酵母発現用ベクターpYES2に組み込んで亜ヒ素感受性変異体酵母acr3株で発現させるスクリーニング系を構築した。培地の亜ヒ酸濃度を5μMに設定して、イネおよびオオムギのアクアポリン遺伝子43個を調べた。その結果、OsNIP2;1, OsNIP2;2, OsNIP3;2, OsNIP3;3, HvNIP1;2の遺伝子を導入した酵母acr3株において亜ヒ酸添加培地で生育が阻害されたので、この5つのアクアポリンが亜ヒ酸輸送活性をもっていると考えられた。このうちイネのOsNIP2;1, OsNIP2;2, OsNIP3;2,については亜ヒ酸輸送活性がすでに他研究者から報告がされた(BMC Biology 6:26,2008;PNAs 105:9931,2008)。本研究で新奇にOsNIP3;3とHvNIP1;2が亜ヒ酸輸送活性をもつアクアポリンとして同定された。 イネの4つの遺伝子についてはイネ植物体での発現と亜ヒ酸添加の影響を調べた。イネを水耕栽培で3週間生育させてから亜ヒ酸を水耕液に添加して、経時的に根および葉をサンプリングした。根でも葉でも4遺伝子のうちでOsNIP2;1の発現がもっとも多く、根では10μMの亜ヒ酸添加によって1日目後に発現が低下し、その後に発現レベルは戻ることが認められた。他の3つの遺伝子の発現は少なく、根ではこれら3遺伝子の亜ヒ酸添加による発現量の大きな変動もなかった。葉においてはOsNIP2;1の発現量は亜ヒ酸による影響はあまりなかった。葉では5μM亜ヒ酸添1日後にOsNIP3;3の発現上昇することが認められたことから、OsNIP3;3は葉における亜ヒ酸応答機構おいて何らか役割をもつ可能性が示唆された。
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