研究概要 |
グルタチオン(GSH)の異化は、細胞内GSH恒常性の維持、その構成アミノ酸の再利用やGSH-生体異物抱合体(GSX)の分解などにおいて必須とされるが、植物でその仕組みは完全に明らかにはされていない。高等植物GGTは、ガンマーグルタミル基の加水分解、または転位活性により種々のガンマーグルタミル化合物の生合成および分解代謝系における鍵酵素であると考えられている。しかも、GSHの異化、GSXの分解、システインのリサイクル系においても初発酵素として極めて重要な働きをしていると示唆されているが、その詳細、特にGGTのin vivoで担っている役割は明らかではない。シロイヌナズナには、ヘテロダイマー型GGTをコードする3種類の遺伝子(AtGGT1, AtGGT2. AtGGT3)が存在する。 本研究では: 1. RT-PCR解析よりAtGGT1, AtGGT3構成的に発現するのに対しAtGG72は花と莢にだけ発現することを明らかにした。 2. atggt1-1, atggt2-1, atggt2-2 T-DNA、 atggt1-2, atggt3-1, atggt3-2トランスポゾンタグ挿入変異株を同定した。変異株のT-DNAまたはトランスポゾン挿入部位を確認した上で、RT-PCR解析より、以上の変異株はヌル変異体であることを明らかにした。 3.遠心分画法によりシロイヌナズナGGTには可溶性と結合性の2群が存在することを明らかにした。 結合性GGTは、500mMNaC1を含む磨砕バッファーで可溶化されたのに対し、1%triton存在下で可溶化されなかったことから、マイクロソーム画分には局在しないと考えられる。また、結合性GGTは、プロトプラストでは検出されなかったことから、細胞壁に局在すると考えられる。そして、野生型とatggt変異株のGGT活性の解析より、AtGGT1は結合性(細胞壁)GGTでAtGGT2及びAtGGT3は可溶性(可溶性画分)GGTであると考えられる。 4.野生型とatggt1のGSH代謝(植物内のGSHとGSH代謝物の蓄積)解析より、AtGGT1はGSH異化に関与することを明らかにした。
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