平成20年度は以前からの継続として、枯草菌のtmRNAの生理機能に関する二つの研究を完成させ、論文として発表した。 1. tmRNAによるトランス翻訳の枯草菌胞子形成への関与 : tmRNA遺伝子を欠損させると枯草菌の胞子形成が顕著に阻害される。この現象の遺伝学的、生化学的解析から、トランス翻訳が胞子形成過程の後期における転写因子シグマKの発現に必要であること、さらにシグマK遺伝子の形成に関わるSpoIVCAの翻訳に必要であることを明らかにした。 2. tmRNAによるトランス翻訳の枯草菌カタボライト抑制への関与 : トランス翻訳を特異的に受ける標的タンパクのひとつにカタボライト抑制を受けるTreP(トレハロース・パーミアーゼ)があることを以前報告した。今回、TrePのtmRNAによるタグ付加が、カタボライト抑制のリプレッサーであるCcpAに依存して起きることを明かにし、その際のmRNA切断位置とタグ付加位置を決定した。その結果、CcpAがtreP遺伝子のcre配列に結合して転写阻害を起こして生じた不完全mRNAを標的としてトランス翻訳が起きることが判明した。枯草菌において、CcpAによるカタボライト抑制により生じた不完全ペプチドの分解にこの反応が一般的に使用されていることも明らかにした。
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