1.ステロールはミトコンドリア膜の主要構成成分の1つであり、その合成欠損株ではミトコンドリアの形態に異常が生じることから、ミトコンドリアでも重要な役割を果たすと考えられる。しかし、小胞体で合成されたステロールのミトコンドリアへの供給・輸送機構は不明である。その理由の1つはミトコンドリアへのステロール輸送を定量的に評価・解析することが難しいことである。そこで、小胞体からミトコンドリアへのステロール輸送を解析する系の構築を行った。出芽酵母のステロールアシルトランスフェラーゼ遺伝子破壊株において、細菌由来のステロールアシルトランスフェラーゼにミトコンドリア輸送シグナルを付加した融合タンパク質を発現させた。発現させたステロールアシルトランスフェラーゼはミトコンドリアに局在したこと、アシルトランスフェラーゼの発現に依存してステロールエステルの生産が見られたことから、実際に小胞体で合成されたステロールがミトコンドリアへ輸送され、エステル化されること明らかとなった。本系を用い、ステロールのエステル化を指標にミトコンドリアへのステロール輸送を解析できると期待される。 2.オルガネラ間の脂質輸送の特異性について解析を行うため、ミトコンドリアの機能に必須なリン脂質ホスファチジルエタノールアミン(PE)のミトコンドリアへの供給・輸送機構についても同様に解析系の構築を行った。細菌由来のPEメチル化酵素をミトコンドリアに局在させ、PEのボスファチジルコリンへの変換を指標にミトコンドリアへのPE輸送を評価する系を構築した。ミトコンドリアの形態・機能に重要な2つの脂質の輸送を比較することが可能となった。
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