研究概要 |
データベースの検索で選んだERとゴルジ体に局在する機能未知で生育に非必須な55遺伝子の欠損株において,HAタグを付加した蛋白質の発現コンストラクトを染色体に組み込み,4種類のゴルジ体局在マンノース転移酵素の局在を調べた.局在がERに大きく変化した株を見いだすことはできなかったが,一部の遺伝子欠損株において,マンノース転移酵素の細胞内の存在量が減少したり,ゴルジ体からの局在の若干の消失が起きている可能性のある株を見いだした.存在量の減少の原因を調べるために,液胞やERADによる分解に必要な蛋白をコードする遺伝子の欠損株の準備を本年度に終了した.SVP26遺伝子欠損により局在がゴルジ体からERに移行するマンノース転移酵素であるKtr3,Mnn2,Mnn5のうちKtr3とのSvp26の結合を以前に示していた。Digitoninで膜を可溶化することにより,Mnn2とMnn5もSvp26と結合することを見いだした.またCOPII小胞出芽アッセイを以前より詳細に行い,Svp26遺伝子欠損株では,Ktr3-3HA,Mnn2-3HAともにCOPII小胞に積み込まれる効率が野生型株と比較して顕著に減少していることがわかった、Svp26自身も効率よくCOPII小胞で運び出されるタンパク質であることから,Svp26はKtr3とMnn2のERからの搬出を促進する機能を持つことが強く示唆された.また逆行輸送を担うCOPI小胞を作り出すコート複合体とSvp26が結合するかどうかを調べた.Digitoninで可溶化した細胞抽出液からSvp26を免疫沈降して,コート複合体のサブユニットの一つであるSec21の抗体でウエスタンを行ったところ,両者の結合が検出され,Svp26がCOPI小胞に積み込まれることにより,自身のゴルジ体局在やマンノース転移酵素のゴルジ体局在を維持していることが示唆された.
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