研究課題
前年度までに麹菌の持つ唯一の細胞質型ホスホリパーゼA_2であるAoPplaAがミトコンドリアに局在化することを明らかにした。本年度はAoPlaAのミトコンドリア内部への局在およびsublocalizationをより詳細に調べた。麹菌ではミトコンドリア精製の実験系が確立されていないため、ミトコンドリア分画法が確立されている出芽酵母を用いることとした。ミトコンドリア染色試薬Mito Trackerとの共染色実験から、酵母においてもAoPlaA-EGFPがミトコンドリアに局在することを確認した。続いてその酵母株からショ糖密度勾配遠心により精製ミトコンドリア画分を取得した。この精製ミトコンドリア画分を用いて、(1)インタクトなミトコンドリア、(2)低浸透圧ショックによって外膜を破裂させ、内膜とマトリクスで構成されるマイトプラストと呼ばれる構造体が露出した状態のミトコンドリア、および(3)Triton X-100処理によって全ての膜が可溶化されたミトコンドリア、の3つのサンプルを調製し、それらをプロテアーゼ処理実験に供した。ミトコンドリアの各コンパートメントに局在するマーカータンパク質の挙動は予想と一致し、この実験系が妥当なものであることが確認された。AoPlaA-EGFPについては、(1)のプロテアーゼ処理では分解されず、(2)と(3)のプロテアーゼ処理では分解された。この結果から、AoPlaAがミトコンドリア内膜と外膜の間の膜間スペースに局在することが示唆された。続いて麹菌ミトコンドリア膜のリン脂質組成を質量分析を用いて調べる実験系の構築に着手した。この目的のため、AoplaA破壊株と高発現株、およびそれらに対応したコントロール株を取得した。次いでそれらの株から粗ミトコンドリア画分を取得するための遠心条件の検討を行い、小胞体や液胞の混入の少ない、ミトコンドリアが濃縮された画分を得ることに成功した。
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