研究概要 |
高度工業製品に広く使用されているEuやSm存在下でコロニー径が大きくなる細菌として通性メチロトローフであるMethylobacterium sp.EU-1が単離された。本菌株はメタノール含有培地ではSmのみに増殖促進を示す。本研究ではEuやSmの増殖促進効果の普遍性を調べるために,M.zatmanii NBRC15845, M.fujisawaense NBRC15843, M.radiotolerans NBRC15690及びM.mesophilicum NBRC15688を用いて,希土類元素とメタノールによる増殖促進効果を検討した。M.zatmaniiではM.fujisawaenseと異なった挙動を示した。また,M.radiotoleransはM.fujisawaenseとほぼ同様の増殖挙動を示した。M.mesophilicumは増殖が不良であった。以上の結果から,EU-1株で認められた現象は必ずしも普遍的なものではなく,菌株に特有の性質であることが分かった。次に,これらの菌株のメタノール脱水素酵素活性を調べた。その結果,M.fujisawaenseではメタノール単独添加では活性はコントロールとほぼ同程度であったが,LaやCeを添加するとメタノールの有無にかかわらず活性が数倍上昇した。この結果は本菌株のメタノール脱水素酵素はLa(Ce)により誘導合成している可能性が示唆された。一方,M. zatmaniiではメタノール存在下ではLaやCeを添加しても活性の上昇は認められなかったが,メタノール非存在下ではLaやCeの添加により著しく活性が上昇することが判明した。La(Ce)添加時および非添加時に発現したメタノール脱水素酵素のN-末端アミノ酸配列の解析結果から,両酵素はそれぞれ異なる遺伝子から発現していることが判明し,La(Ce)添加時はmxaF'伝子の,また非添加時はmxaF遺伝子の産物であることが明らかとなった。
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