研究概要 |
本年度は,生理生化学的,分子遺伝学的に最も研究の進んでおり,全ゲノムDNA配列が決定されているMethylobacterium extorquens AM1株を用いて希土類元素との関わりについて研究を進めた。メタノール培地に各種希土類元素を添加しても本菌株の増殖は促進されなかったが,Laの添加によりメタノール脱水素酵素(La-MDH)活性が上昇した。Caの添加ではメタノール脱水素酵素(Ca-MDH)活性の上昇は認められなかった。メタノール及びLaあるいはCa存在下で培養した菌体の粗酵素液を出発物質として,La-MDH及びCa-MDHをPD-10,HiTrap SP Sepharose HP及びHPLCを用いるMonoSにて精製した。La-MDH精製標品はSDS-PAGEにて約60kDaの単一バンドとして検出された。一方,Ca-LDHは約60kDaと約10kDaの2本のバンドとして検出された。未変性酵素の分子量はゲル濾過クロマトグラフィーにより,La-MDH及びCa-MDHはそれぞれ120kDa及び119kDaと推定された。これらの結果から,La-MDH及びCa-MDHの分子構造はそれぞれホモ二量体及びヘテロ四量体と推定された。さらに,La-MDHの60kDaサブユニットのN-末端アミノ酸配列はNESVLKGVANPAEQVLQTVDと決定され,xoxF遺伝子産物の想定N-末端アミノ酸配列のシグナルペプチド以後の配列と完全に一致した。この結果はLa添加によりM.extorquens AM1株のxoxF遺伝子が転写発現したことを示している。一方,Ca-MDHの60kDaサブユニットのN-末端アミノ酸配列はNDKLVELSKSDDNWVLPGKNと決定され,AM1株のmaxF遺伝子産物のシグナルペプチド領域を除いたアミノ酸配列と95%の一致をみた。この結果は,Ca-MDHが従前より詳細な研究が行われてきたMDHであることを示している。さらに,ICP分析の結果,La-MDH1分子当たりLaを1原子含有していること,また,このLaはEDTA処理では除去できないことを認めた。これらの結果は,La-MDHの活性発現にLaが必須元素として機能していることを示唆している。
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