研究概要 |
本研究は、メタン生成古細菌Methanosarcina mazei(メタノサルシナ・マゼイ)のaggregateからsingle cellへの形態変化に関わる細胞壁分解酵素disaggregataseの発現条件を解明し,その機能をメタンの発生抑制とメタン発酵の効率化に活用するための基盤的情報を得ることを目的とする。 M. mazeiは絶対嫌気性であり,disaggregataseは嫌気条件下でのみ活性の発現が見られる酸素感受性の酵素である。そのため,これまでに確立した大腸菌を用いたdisaggregatase遺伝子の発現系を用いて,disaggregataseタンパク質の大量発現を行い、発現時およびタンパク質調製時の酸素条件や抽出液の組成と還元条件,得られたタンパク質の活性発現に必要なイオン強度や還元状態など,disaggregataseタンパク質の活性が安定的に発現される条件を検討した。大腸菌より好気的に調製した可溶性画分について気相の窒素ガス置換処理と還元剤添加を行った場合,また,大腸菌の嫌気培養と無酸素条件下での抽出液調製,さらに還元剤添加を行った場合でも,disaggregataseの活性は得られなかった。M. mazeiのdisaggregatase粗酵素液の活性発現条件の検討から,酸素感受性以外の要因として,Mg^<2+>, Ca^<2+>, Na^+のイオン強度などが考えられたため,発現タンパク質を含む可溶性画分についてそれらの条件を調整した緩衝液を用いることによりdisaggregataseの活性が得られた。すなわち,disaggregataseタンパク質は好気条件下で大腸菌により発現・調製した後、適切なイオン組成の溶液中で還元すれば,活性が得られることが明らかとなった。
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