真核生物では翻訳とmRNAの分解が密接に連携していて、その制御は遺伝子発現をコントロールする上で重要である。ストレス条件下における非翻訳状態のmRNAは、翻訳制御因子やRNA分解装置などとともにP-body(cytosolic processing body)やストレス顆粒(stress granule)という構造体を細胞質に形成し、分解・隔離・再利用されている。出芽酵母では、ストレスの種類によってP-bodyやストレス顆粒の形成が大きく異なり、ストレス応答における生理的な役割もよくわかっていない。酵母でストレス顆粒の存在が確認されたのは2008年であり、エタノールストレスによってストレス顆粒の形成が誘導されるかは不明であった。そこで、エタノールストレスによってストレス顆粒が形成されるか検討したところ、 ・エタノールストレスによってもストレス顆粒の形成が誘導される. ・P-bodyの形成は6%以上のエタノールによって誘導されるのに対し、ストレス顆粒は10%以上でなければ形成されない. ・エタノールストレスを除去すると、P-bodyは速やかに消失するのに対し、ストレス顆粒は長時間細胞質に残ったままである. ということを見出した。P-bodyの形成が誘導される条件よりも高いエタノール濃度でストレス顆粒が形成されることや、ストレス除去後の両構造体の消失度合いが異なることから、酵母のエタノールストレス応答における両者の役割には違いがあると考えられた。
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