化膿性溶血型連鎖球菌(Streptococcus属細菌)が、多糖リアーゼと不飽和グルクロニルヒドロラーゼ(UGL)の協調作用により宿主細胞外マトリックス(グリコサミノグリカン:GAG)を単糖(アミノ糖とαケト酸)にまで分解し、宿主細胞へ侵入・感染することを示唆してきた。本研究では、連鎖球菌における宿主細胞への侵入・感染機構を明らかにするため、連鎖球菌由来UGLの基質特異性とその構造要因を解析した。 Streptococcus agalactiae由来UGLは、GalNAcの6位が硫酸化された不飽和コンドロイチン二糖(Δ6S)を最良の基質とした。UGLの不活性変異体D115NとΔ6Sとの複合体の立体構造をX線結晶構造解析により分解能2.0Åで決定した。UGLはα_6/α_6バレル構造を示し、分子中央のクレフトで基質Δ6Sと結合する。UGLのSer368は、Δ6Sの硫酸基と水素結合を介した相互作用を示す。また、硫酸基周辺に位置する正電荷アミノ酸残基Lys370は負電荷の基質を安定化すると示唆された。そこで、部位特異的変異体(S368GとK370A)を作製し、Δ6Sとの親和性を決定した。その結果、野性型酵素の親和性と比較すると、両変異体における親和性は、2~20倍低下した。従って、Ser368とLys370が硫酸基との相互作用に重要であると示唆された。哺乳動物におけるグリコサミノグリカンは高度に硫酸化されているため、硫酸化糖に作用する連鎖球菌UGLは宿主細胞外マトリックスの分解へ寄与していることが考えられる。
|