ポリミキシンBの真菌液胞膜断片化作用を増幅するアリシンに替わる天然由来成分の探索研究においては、タマネギ細胞破砕液中にアリシン同等の活性を有し、アリシンを上回る熱安定性や低沸点のイオウ化合物としてズビベランAを単離、同定することができた。一方、高価で熱安定性を欠く市販の化学合成アリシンを使用する方法に替えて、アリインからアリイナーゼの作用によって二次的にアリシンを生成させる方法についても検討した結果、土壌よりアリイナーゼ生産菌の単離に成功した。種々菌学的性質ならびに16sリボソームDNAの塩基配列にもとづいて行った同定実験の結果から、本菌をEnsifer adhaerensと同定することができた。次いで、本菌のアリイナーゼがニンニクアリイナーゼに比べて熱安定性に優れていること、ニンニクを始めとする植物由来酵素が作用しにくい(-)-アリインにより選択的に作用する基質特異性を有していることなどの事実を明らかにしている。さらに、アンホテリシンBの液胞膜断片化作用を増幅しる因子として、N-methyl-N-dodecyl guanidineの効果をC. albicansを対象する実験によって検証した。AmBの作用に耐性となるエルゴステロール合成酵素遺伝子の欠損株が依然としてPMBに感受性であること、また、エルゴステロール前駆体の構造に応じてAmBの液胞膜断片化作用の強度に変化が生じるなどの事実を明からにした。
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