研究概要 |
本研究では、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)野生株のグルタミン酸過剰生成を誘導するストレス条件(生育必須因子であるビオチンの制限,界面活性剤であるTween 40の添加,抗生物質であるペニシリンの添加など)において発現量が有意に増加する7遺伝子、すなわち、NCgl0266, NCgl0917, NCgl2841, NCgl2944, NCgl2945, NCgl2946, NCgl2975の機能解析を行うことで本微生物の新たなストレス応答機構の理解とその産業応用を目指している。 上記のうち、互いに類似性が高く50数アミノ酸残基からなる短鎖タンパク質をコードすると推定される大変興味深いNCgl2944、NCgl2945、NCgl2946遺伝子の解析を最初に行った。これまでに、これらの遺伝子は相同性が高く隣接していることから3遺伝子領域全体を薬剤耐性遺伝子と置換した遺伝子破壊株を作製し、これら遺伝子がグルタミン酸生産誘導ストレスへの対応ばかりでなく、本微生物の生育にも大ぎな影響を及ぼす非常に興味深い機能を担うことを示唆する結果を得ている。そこで、より厳密に当該遺伝子領域の機能解析を行うために当該遺伝子領域をイン-フレームで破壊した破壊株の作製を行った。 また、残りの4遺伝子(NCgl0266, NCgl0917, NCgl2841, NCgl2975)について、イン-フレーム破壊株の作製を行った。 更に、グルタミン酸過剰生成時における解糖系やTCA回路等の中枢代謝に直結する酵素(ピルビン酸から酢酸を生成するピルビン酸:キノンオキシドレダクターゼ,リンゴ酸からピルビン酸を生成するマリックエンザイム,オキサロ酢酸からリンゴ酸を生成するリンゴ酸デヒドロゲナーゼ)活性の顕著な変化を見出し、それら酵素遺伝子をイン-フレームで破壊した株の作製を行った。
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