研究課題
嫌気性菌は有機物の終末分解者として、また腸内環境の掃除役として、嫌気的な環境で活躍しています。筆者は代表的な絶対嫌気性菌で、環境浄化やバイオマスエネルギー生産の主力菌である絶対嫌気性クロストリジウム属細菌の酸素感受性機構の解明と、腸内の代表的な嫌気性菌であるビフィズス菌の酸素感受性メカニズムの解明を目的としています。供試菌に用いた優秀なブタノール生産菌C.acetobutylicumは、酸素の存在を瞬時に感知し、複数の酸素応答性遺伝子を協奏的に高発現します。発見された蛋白質や遺伝子は酸素代謝系に直接関与することが推定され、その機能解明は嫌気性菌が有する未知の酸素代謝機構の発見につながります。これまでに機能未知遺伝子クラスターにコードされる4個の遺伝子産物を精製し、それらがNRORを中心酵素とする酸素と活性酸素を瞬時に消去する優秀な酵素複合体を形成することを明らかにし、国際ジャーナルに発表しました。2011年度は機能未知遺伝子の機能解明を目的として兵庫県立大学の樋口芳樹教授にご協力頂いき、酸素代謝の中心的役割を担うNRORの結晶化に成功しました。またビフィズス菌に存在する未知の酸素代謝機構の同定を目指しました。筆者らの研究結果より、ビフィズス菌の酸素感受性は過酸化水素(H_2O_2)の生産が主要因であることが強く推定されました。そこでH_2O_2の生産・分解系に着目し、ビフィズス菌属の代表種で酸素感受性を示すB.bifidumから酸素感受性の原因酵素の精製に成功し、国際ジャーナルに発表しました。2010年度はビフィズス菌に存在した第2のH_2O_2生産酵素の同定を行い、その精製に成功しました.研究成果は2011年度の日本乳酸菌学会にて発表しました。
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