本研究は、真正細菌の16S rRNAにおいて普遍的に見られる7-メチルグアノシン(m^7G)修飾の生理的意義の解明を目的としている。主な研究材料としては大腸菌および放線菌を用いており、当該年度においては以下の研究を実施した。 1.16S rRNAにおけるm7G修飾を司るrsmG遺伝子を欠損した変異株(ΔrsmG変異株)の各種培養条件における生育を野生株と比較した。しかしながら、試した全ての条件下で生育の差は認められなかった。したがって、人為的な培養条件下における本修飾の生理的意義は未だ不明である。 2.大腸菌の遺伝子発現に及ぼすΔrsmG変異の影響を調べるために、DNAマイクロアレイによる遺伝子発現プロファイルの解析を行った。標準的な培養条件下における遺伝子発現プロファイルは、対数増殖期、定常期のいずれにおいても野生株のそれとほとんど差が見られなかった。DNAマイクロアレイ解析は次年度も引き続いて行う予定である。 3.ΔrsmG変異と共存したときに致死となる性質を示す変異(合成致死変異)を探索するための実験系を構築した。実際のスクリーニングは次年度に行う。 4.モデル放線菌であるStreptomyces coelicolor A3(2)株において、rsmG変異は二次代謝(抗生物質生産)を活性化する。そこで、他の放線菌におけるrsmG変異の効果を検証した。その結果、本変異はストレプトマイセス属放線菌においては概ね二次代謝活性化に有効であること、一方、ストレプトマイセス属以外の放線菌ではあまり効果が無いことを明らかにした。
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